出発原料の混合法と生成物の粉砕法について

〜匿名の方からのアドバイス〜

高品質の試料を合成することで定評がある方から「ノウハウを一般に公開して も一向に構わない」とメールを頂いた1) ので、お言葉に甘え、貴重な実験情報としてこのページを作らせて頂きました。



出発原料の混合法


(1) 出発原料:酸化物,炭酸塩の高純度試薬99.99%程度
(99%程度純度ですと,不純物の影響で格子定数がずれます)

(2) 混合:ボールミルにて
 経験上,三種類以上の粉末を均一に混合する場合,乳鉢での混合で は4h混ぜる必要がある.しんどいのでボールミルにて混合している.

 入れ物:ポリ容器(50ml,250ml)
 ボール:ジルコニアボール,SiCボール φ10mmとφ2mmの2種類使用
・ボールの量:容器の1/3程度をボールが占める程度
・二種のボールの割合:細密充填を目指しているが適当
 溶媒 :エタノール,もしくはアセトン
・酸化物でも溶解するので注意が必要.
・容器には2-3割程度の空気が入っていることが重要
 ミル :通常の一軸ボールミル(数rpm)もしくは遊星型ボールミル

一軸ミル(http://www.npasystem.co.jp/01pdt10.html
遊星型ミル(http://www.fritsch-heidolph.co.jp/p5.html

 混合時間・一軸ミルでは12時間程度
 ・遊星型ミルでは1から2時間程度

(3) 乾燥:ロータリーエバポレーターにて

 装置は下記をご参照下さい.
http://www.ilw.co.jp/mainpage/macine/evapo/evapo-main.html

 バット乾燥(容器に放置して乾燥)では,初期に溶媒中で均一に混 合されていたとしても,乾燥時に不均一な粉末になってしまう(粉末 の比重の差が原因).

 ナス型フラスコに,混合液体を入れ,回転させながら乾燥.回線ス ピードが速すぎると,遠心分離してしまう.回転は1rpm程度が適当

これで,均一な混合粉末のできあがりです.




生成物の粉砕法


まず,出発原料を均一に混合することが最重要であると考えていま す.混合は,上記の方法;ボールミルにて混合後,ロータリーエバポ レーターにて乾燥する方法で行っています.

 この混合粉末を,粒成長しない程度の比較的低温で焼結させ,XRDの 測定に使用しています.我々が扱っている誘電体の層状結晶は,銅酸 化物超伝導体よりは劈開が少ないのですが,ある程度の劈開性をもち ます.経験上,一度サイズが大きくなった結晶を粉砕すると,必ずと いって良いほどc軸配向のXRDが測定されます.粉砕方法やサンプルホ ルダーへの充填方法を色々試しましたが,効果はありませんでした.
結論として,「(異方的に)粒成長しない焼成温度を見極めて作製し た粉末がベストである」に至りました.適当な温度で焼成した粉末 は,乳鉢で軽くほぐす程度で凝集が無くなるため,ごりごりとすりつ ぶす粉砕の必要がなく,応力の問題も回避できます.

ゾルゲル法や溶液法も試しましたが,XRD用の良質な粉末は得られませ んでした.一般に,化学的に調整した混合粉末は,反応活性が高いた め400-600℃程度で低温相(第二相)が生成します.薄膜作製において は,この低温相の生成を抑制することを目的として,急速加熱が用い られています(昇温速度は100℃/秒程度).粉末作製の場合,このよ うな急速加熱は難しいので,どうしても低温相が生成してしまいま す.その後,温度を上げて焼成し目的の単一相が得られたとしても, 結晶子サイズの分布が大きくなるため,粉末構造解析に不向きな試料 になってしまうと考えております.



注釈

1) 正確には泉先生からメールを転送して頂きました。発信する際、匿名を希望されて いたので名前は公開できませんが、その方が合成する複酸化物は高品質なことで定評が あるそうです。混合法が特に重要なのだという話でした。