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偶然からの大発展
                                                                              木俣 肇
私はアレルギー科の医師であり、特にアトピー性皮膚炎(以下、アトピー)の患者さんを、毎日多数診療している。しかし、アトピーは、原因が多彩であり、決め手の検査がない。何か、より直接的に、アトピーの原因論に迫るベストな指標がないかと、考える日々であった。ある土曜日、何気なく新聞の広告を見ていた。それは、スポーツ紙の大阪版でアトピーとは全く関係ない。偶々そこに、「アトピーと毛髪分析」という言葉が載っていた。よく広告を見ると、大阪にある個人の施設で、アトピーを始め色々な疾患で、毛髪を少量採取して毛髪中のミネラルを測っている。毛髪は組織であり、体のミネラルを表しているわけである。しかも子供でも採取は毛髪を少し切るだけで簡単で、苦痛は全く無い。ミネラル異常が認められれば、不足しているミネラルを補充して栄養を改善する。非常に論理的である。しかし、保険適用がないので、今まで医療の世界では使用されていなかった。「もしかしたら、毛髪分析がアトピーに検査として、有用かなと」思い、まず文献検索をした。きちんとした検査なら、必ずいい論文になっているはずである。世界の医学論文を検証した。すると、あった。古い論文だが、しっかりした科学的根拠が米国の研究者が発表していた。但し、1回の検査が高価なのと、検査機器の感度の性能が十分でなく、その後すたれていた。
   しかし、今は工学機器の性能があがり、検査感度も向上した。これだけ予備に勉強して、その大阪の施設に連絡した。驚いた事に、その施設の経営者は私の事を知っており、面談を快諾してくれた。そこで、昼食を共にして、歓談し、意気投合した。何かの時には協力しようと、約束して。
   その後、何とか毛髪分析を実際にアトピーの方に実施できないかと、考えていた。問題は検査費用である。個人で支払うには高価すぎる。その時、関西のある会社から、アトピーの方に海洋深層水を飲んでもらい、その効果を検討したいという、申し出があった。その会社の幹部に会ってみると、臨床的な効果以外にも、数字でわかる検査もして欲しいとの事であった。はっと、毛髪分析がひらめいた。費用の事を申し出ると、問題ないということであった。早速、私が診療しているアトピーの方々にお願いして、その会社の海洋深層水を半年間飲む検討を始めた。まず、飲用前に毛髪を封筒に入るくらい少量切り取り、サンプリングを行い、同時に血液検査も施行した。
   そして毎日500mlの海洋深層水を、半年間無料で戴いて検討したのである。結果は大成功であった。毛髪分析で、ミネラル異常がみつかり、それが海洋深層水の飲用で全員が改善したのである。喜んで私は医学論文を執筆した。幸いその論文は、ヨーロッパの医学雑誌に、投稿し受諾された。反響も大きかった。毛髪分析の会社も、検査の依頼が多く来て、更に名前もうれてPR効果もあり、経営的にも潤った。そして、その利益でまた広告を出すことができた。海洋深層水の会社は更に得た物が大きかった。商品の価値の確立と、それを英語論文で確証したというお墨付きで、海外展開に発展できたのである。海外では、論文の付加価値は計り知れない。論文を引用して、その広告を出して、非常に受注が増えた。更に、その会社は飲用するアトピーの方々の人数を、大規模に増やして再検した。ここでも、被験者を募るために広告を出した所、100人くらいの参加者を集めれた。広告の力の大きさを再認識した次第である。そして、また半年間飲用してもらい、飲用の前後で毛髪分析をした。分析するミネラルの種類も更に増やした。結果はより素晴らしいものであり、今回は私が指導して、その会社の社員に、ヨーロッパの医学雑誌の投稿させ、見事に受諾された。全く医学の素人の論文が、プロの雑誌に掲載されたのである。その社員及び、会社の喜びは、計り知れない。とりわけその会社の社長は欣喜雀躍であった。当然、その論文を元に広告をして、また海洋深層水の売り上げが増加した事は言うまでも無い。
   このように、広告による新事実の発見、それによる商品の価値の確立、それがまた宣伝効果を生むとという、好循環を引き起こした。最初は、ほんの偶然で大阪の一スポーツ紙からはじまった事が、世界的な大発展になった。広告のベストな威力である。

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